楽器に関する覚え書き

十二弦ギター


 そろそろ書かなくてはならないなあ。十二弦ギター。

 難しい楽器である。ギターの中で一番難しいかも知れない。私は元々キーボード奏者なので、オルガンとかピアノを引き分ける必要があるのだが、時々ピアノの曲をそのままオルガンで弾いてみたり、逆も試したりする。本当はオルガンとピアノは全然違う奏法を必要とするし、シンセサイザーも混じれば尚更なのだが、ロック系でこれが「鍵盤」として一括りにされているのは、取り敢えずは同じ奏法で何とかなるというか、そもそも鍵盤の大きさや配列が共通しているからである(チェンバロの本物を弾いてみたことがあるが、大きさの企画が違うので、何とも演奏しにくかった)。

 だからギターも同じに考えられる。大きく分けて、クラシック・ギター、フォーク・ギター、エレキ・ギターに分類するとして、これらはそれぞれに独自の奏法が開発されている。しかしまあ、時々は相互乗り入れというか、エレキ・ギターで「禁じられた遊び」を弾いてみるなどという悪戯もやってみるのだが、こんなことが出来るのも、基本的な調弦が同じだからだ。
 だから十二弦ギターも、要するに同じに調律されている弦が二本並んでいるだけなのだから、これで他のギターと同じ曲はちゃんと弾けるはずである。問題は、弦の数が二倍になっただけそれを抑えるのに力がいる(特にFコードの時などの、人差し指のセーハー)のと、同時に二弦を一本の指で弾くのが結構難しい点にある。ピックでトレモロなどを出すにはマンドリンと同じで便利(というよりも、本音を言えば「チューブラー・ベルズ」などを弾くときに、この奏法がやりたくて買ったのだ)なのだが、爪を短く切っている身としては、親指と他の指では弾く向きが上下逆になることもあって、特に三弦と四弦で極端に音が違ってしまうのである。
 この楽器、聴くところによると最終的には普通のフォーク・ギターと同じように弾くのが目標らしいが、六弦のギターですらままならない私には、当分出来そうにない。ただ、このギターで出来るようになった曲は、他のギターでは楽に弾けるようになる。まるで大リーグボール養成ギプスかブラックシューズのようだが、そういう意味では、練習用のギターとしてはいいのかも知れない。それに少なくとも、ストロークでコードを出す分には、音が華やかである点も気に入っている。

宇宙暦38年8月7日)


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