phaedra 2005

tangerine dream

      phaedra
      mysterious semblance at the strand of nightmares
      movements of a visionary
      sequent C
      delfi


 正直、「何じゃこれは?」という感じである。元々ネットでの評判も余り良くないのは知っていたのだが、個人的にはタンジェリン・ドリームの最高作だと思っている「フェードラ」のリミックスと言うことで、新宿の輸入盤屋を歩き回ったのだがどうしても手に入らなかった。それが、本家のタンジェリン・ドリーム・サイトからダウンロード出来ると知り、早速落としてみた。海外とのクレジットカードのやり取りは初めてだが、いやあ、緊張したなあ。
 で、ようやく耳にすることが出来たのだが、何だ、自分はこんなものを探して歩きまわっていたのか。はっきり言って、これは「フェードラ」ではない曲と、かつて同アルバムに収録されていた曲に勝手な音を付け足しただけである。

 まず、メインの「フェードラ」。当時のタンジェリン・ドリームは「完全なる即興演奏」を売りにしていて、その割には「リコシェ」なんかちゃんと複数回演奏されている(オフィシャル・ブートレッグで聴ける)わけだが、だとすれば少なくとももう一度「フェードラ」の名を冠するからには、てっきりあのシンセサイザーリズムを基底にして肉付けをやり直すのかと思ったら、そもそも全然違う曲じゃないか。そりゃ確かにあのフレーズの片鱗は入っているが、これだったら、「浪漫」と「モノライト」を同じ曲だと言っても通ってしまう。
 一番の失敗は、リズムにドラムス(仮令たとえ電子的な物だとしても)を入れてある点だ。「フェードラ」と言えば、当時の彼らの作り出した「シンセサイザー・リズム」の最初の成功作なわけで、それは「ルビコン」に引き継がれ、「リコシェ」でも健在で、仮にドラムスが入っても、「ま、それも面白いかな」と思わせてくれた(「サイクロン」の歌も同様)。それが今になって「フェードラ」にドラムスを入れてどうするのだ。全く以て理解に苦しむ。

 続く「夢魔の浜辺」以下の三曲は、リミックスというよりは小判鮫である。それだけで既に完成しているものに、わざわざ余計な音を足しただけで、「夢魔の浜辺」のフルートの音こそちょっとだけ「おっ」と思わせるが、途中でコードが合わずぶち壊しだ。矩形波の効果音も意味がなく、これは一体、どういうつもりなのだろう。

 それでも最新作の「デルファイ」だけはそこそこの出来である。当時のタンジェリンの味を残してはいる。ただ、これだけでどうとかいう程の大作ではないし、そもそも元曲が存在しないから変な先入観なしに聴けるのだとも言えるわけだ。

  というわけで、余りお薦めのアルバムではない。「アクア」に収録されている「アップランド」をリミックスした「アップランドの夜明け」もだが、確かに最近のエドガー・フローゼが、つまらないリミックスで昔のファンの怒りを買っているのもよく解る。それともこれは、私の方が年を取り過ぎたのだろうか。30年を超える付き合いなんだがなあ。

宇宙暦40年3月13日


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