電子タバコに関するあれこれ


 この話題はシャーロック・ホームズなのか、はたまた工作なのか電子アイテムなのか考現学なのか、それともエアガンに関する分野なのか迷ったのですが、結局どれにも関係あるし、わざわざコーナーを新設する程の内容でもないので、上記全ての部屋からリンクしてあります。

 電子タバコが面白い。
 実は私は煙草は吸わないので、禁煙用具としての意味は全くないにもかかわらず、一回始めたらすっかりはまってしまった。まあ、電子タバコWikiその関係のフォーラムの人達に比べればどうってことのない嵌り方ではあるが、結構一日中プカプカやっているのだ。
 本物の煙草は大学生時代にちょっと吸っていたが、一年も続かなかった。ニコチンを吸っても特に心が落ち着くことも気持ちが悪くなることもなく、中毒もしなかったところをみると、元々余り効かない体質なのだろう。或いは、父がヘビースモーカーであった上、私が子供の頃は副流煙の害もそれほど喧伝されていなかったから、小さい頃から煙草に慣れていたためかも知れない。いずれにせよ、金がかかるだけでいいこともなかったので、すぐに飽きてしまったというところだ。
 ただ、シャーロック・ホームズの咥えているパイプや、マカロニ・ウェスタンでクリント・イーストウッドが吹かしている安葉巻は、単純に格好いいとは思っていた。実際、未成年が煙草に走ってしまう理由の一つには、あれが格好いいからというのもあるようだ。有害な習慣が格好いいとは何とも困ったものだが、この辺、人間の感情は単純には割り切れない。私の場合は、結婚してからの家族への遠慮(わざわざ家の外に出て吸うというのは、どうも仲間外れにされているみたいというか何というか、とにかく格好悪い)や、感覚的には効かないとはいえ、一応ニコチンやタールの害もあるだろうと思って、パイプも葉巻も吸っていない。そこに現れたのが、この電子タバコなのである。
 電子タバコの細かい説明についてはウィキペディアのその項を見ていただいた方がいいとして、まあ要するに、グリセリンの混ざった蒸気を出す、様々な香料の入った噴霧器といったところだ。これが本当に害がないかはさておき、あちこちで言われている通り、ニコチンもタールも一酸化炭素も発生させないわけだから、少なくとも本物の煙草よりはずっとましだろう。で、たまたま本屋で宝島社から出ている試用版みたいなのをみて買ってしまったのが始まりである。
 写真上左のものがそれで、茶色いフィルターのついているものが電子タバコ、その下にある白フィルターは後述するネオシーダーである。ただし茶色いフィルター部は、実は香料の入ったリキッドを含むカートリッジになっている。この部分を取り換えて使うわけだ。
 これはUSBから充電する。白い本体部分が電池。吸ってみると確かに煙のような蒸気が上がり、それなりの香りがする。煙ではないのでそんなに匂いは残らない。三本のカートリッジがついていたが、ミント味というものより煙草味の方が好みに合った。考えてみると、私は火を点けていない、煙草の葉そのものの匂いは好きなのである。その感じだ。
 それでネットで調べてみたら、何とパイプ型があるという。DSE601といい、楽天で簡単に買えた(写真右)。これは附属のカートリッジの香りが余り好きではないのだが、空になったら自分で別のリキッドを足せばいいらしい。ということで、コーヒー味だのミント味だのヴァニラ味だののリキッドを買うことになり、今に至っている(細かい用語の意味は何となくお解りだと思うが、上記の電子タバコWikiに用語集がある)。
 問題はこのパイプ型、本物なら葉を入れる口の所に妙な蓋(左写真)がついており、これがどうも格好よくない。そこでプラスティック製材を使ってそれらしいものに改造してみた(右写真)。形取り用の樹脂が柔らかいうちに銀紙をくしゃくしゃにして跡を付け、固まったプラスティックに彩色したものである。
 実はこの部分には通電していることを知らせる発光ダイオードがあり、残念ながら改造版ではこれが見にくくなってしまう。電池が切れてくると緑色に明滅するのが分かりづらいので、どうしても手で覆ってみることになるが、何、本物のパイプもそんなには明るくならないことがあるのだ。
 ということで、紙巻型とパイプ型を併用して、ネットでも見ながらぷかぷかやるわけである。西部劇の真似をすることを考えると安葉巻型のも欲しいのだが、その型はギャング映画の悪役が加えているような高級品っぽいものしか出ていない。残念。

 さて――。

 そもそも電子タバコを使っている人達の目的は、何種類くらいあるのだろう。元々禁煙の為に発明されたとはいえ、海外流通ではニコチン入りのリキッド(国内では薬事法で販売禁止)もちゃんと存在するのだ。これでは厳密な意味での禁煙にはならない。
 そこでざっと考えてみると、

    ・ 純粋に禁煙の為の使用者
    ・ ニコチンは入っているが、タールや一酸化炭素は発生しない、いわば準煙草(嗅ぎ煙草や噛み煙草みたいなものか)としている人達
    ・ これ自体を面白がっている人達

などが思い浮かぶ。私は当然、このうちの最後のグループだ。というか、結構このタイプは多いのである。使い方としては本末転倒なのだが、スタパ斎藤氏なんかは、スタパビジョンで「電子タバコを面白いと思って色々試していると、本物のタバコを吸う暇がなくなってしまった」と言っているくらいだ。
 先の、Wikiフォーラムの人達も同様である。リキッドの自作コーナーをみると、香料としてバルサミコ酢や味噌汁、醤油、ラー油、イチジク浣腸(これはグリセリンの入手先かも知れないが)などを試した報告もあるくらいだ。禁煙パイポの応用とすればせいぜいミントや柑橘類、行ってもコーヒーやヴァニラ止まりじゃないか、普通?
 ただ、その中でも私は少し違うらしい。というのは、電池の持ちを伸ばす為に発明されたMOD系に全く興味がないからだ。このタイプの電子タバコは、電池部等を大きくしたため最早煙草の形を全く成していず、小型のラジオというか、MP3プレイヤーというか、何だか電子機器(あ、本当にそうなのか)の一種にしか見えない。それではホームズや西部劇の真似が出来ない。私はあくまで「煙草に見せかける」ことがしたいのである。

 電子タバコは今のところ、社会への認知度は低い。したがって、煙草でないにもかかわらず、公共の場では控えるべきであるとの認識が一般的だ。モデルガンだのダガーだの、使い方を誤った人達の為に、真っ当な使用者までが迷惑を食らった例はいくらでもある。これまで弾圧されてはたまらない。だからファンは慎重である。そのため、白い電子タバコを黄色く塗って、逆に「煙草に見えなくして」いる人までいる。ただ、このやり方は私の目的に合わない。
 もしかして、将来煙草への規制がもっと強化されてくると、映画やドラマなどでの喫煙場面は電子タバコで代用する日がくるのだろうか。そのようなことが認知されてくれば、また違った評価も出て来るかも知れない。或いは、前述のネオシーダーという薬、煙草そっくりだが実は塩化アンモニウムを吸引して咳を沈めるというもので、これなど今のやり方ではタールと一酸化炭素は煙草と変わらない(ちなみに、このネオシーダー、薬だから味や香りは二の次だが、タバコ吸いからみてもひどい匂いだそうである。だからといってフィルターにミントのリキッドを垂らしても旨くはならない。やってみたのだから、間違いありません)。ならば、電気的に気化すればよいではないか。いや、喘息の薬などにも応用出来れば――。

 新しい技術が現れた時、社会は大抵混乱する。インターネットも携帯電話も、便利ではあるが、それは悪用と裏表だ。電子タバコは今のところそれほどのものではないが、うまく利用すれば、禁煙用具としてではなくとも価値は出て来ると思う。それがどうなるか見てみたい。長生きはしたいものだ。

 ところでこの器具、「電子〜」と銘打つには回路が簡単過ぎやしないか? この程度なら「電気タバコ」と呼ぶべきでは、と思うのだが、如何だろう。電子楽器と電気楽器は違う物である。

宇宙暦42年4月26日)


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