佐治武士作和式ナイフ


 佐治武士さんは越前鍛冶の名工だそうです。最近日本刀に凝っていた為、ダマスカス鋼の渓流刀が非常に美しく砥ぎ上がり、そういえばキャベツを刻むような長いナイフが無いよなあ、と思って和式ナイフの良い物を探していたら突き当たりました。実用刃物なので、値段も美術品である日本刀より桁違いに安い。それで二本も買ってしまったという訳です。

 まずこちらが渓流刀黒・ 白紙多層鋼180mmです。家にある三徳包丁が刃渡り17cmだったので、それに合わせて買いました。前述のように、キャベツを切るのに適切な長さを求めてのことです。
 一言でいって、素晴らしいナイフです。切れ味に関しては砥いだ私の責任として、青砥石で磨った後、しばらくすると青く光り出します。鞘に入れたまま吊るしておきたかったので錆が心配だったのですが、今のところ、水をきちんと拭き取っておけば大丈夫の様子。何と言うか、山男が腰に下げて山中を歩くのに相応しいような。もっとも現実には、こんな重い刃物をぶら下げて歩くのは結構大変だそうですし、そもそも私は登山なんかしやしないのですが――。
 それはさておき、キャベツが玉のまま切れるのは当然として、ちょっと高くから振り下ろせば、玉蜀黍とうもろこしが真っ二つになります。今まで家族用に茹でる玉蜀黍は、長いままだと鍋に入らず、刃物で傷を入れてから折っていたのが、見事に解決しました。まだやってませんが、出刃包丁と同じように、魚の背骨も楽々断ち切れるでしょう。
 強いて問題があるとすれば、刃渡りが長い為小回りが利かず、果実や芋の皮を剥くには適しません。やはりある程度は使い分けが必要です。刃が三徳包丁や柳刃より厚いので、刺身を引くにはもっと適した物があるかも知れませんが、それはマルコポーロロッキーマウンテンで対応出来ます。刃を眺めるのも楽しく、とにかく逸品でした。

 次にこちらは忍者・白紙割込と言います。ご覧のように、基本的な意匠は日本刀を模した品です。
 実はこれは、ちょっと迷いました。というのは、柄に糸が巻いてあると、料理に使って魚油などが付いた場合、後で綺麗にするのが大変だと思ったからです。佐治さんにはもう一つ、影法師というシリーズがあって、こちらは刃渡りも長くキャベツも刻める。しかし洗うのが難しい。さてどうしよう。という訳。
 それで上記の渓流刀を注文したのですが、それと前後して短刀の砥ぎに失敗してしまった為、守り刀みたいなナイフも欲しいなあ、まあ、手の出る値段ではあるしなあ(13,500円。一回飲みにでも行ったら、軽く出てしまう程度の金額)、細工にでも使えば良いし。ということで楽天へ――。
 このシリーズには、他にもダマスカス鋼製とかあるんですが、白紙割り込みは一番安い物です。それを選んだ理由は、値段より、ダマスカス鋼ばっかり買ってもつまらないし、何と言っても一番日本刀(その名の通り、忍者の武器ですな)に似ているのがこれだったから。
 さて、届いた品を見ると、軟鉄で白紙鋼を挟んだとあった通り、黒地が白い刃を包んでいます。元々和式ナイフや包丁には、日本刀と同じ重ねの技術が使われているものですが、これはそれをのまま出しているというか。ただ、軟鉄の部分が梨地なので、黒ではなく灰色に見えます。これを磨き潰すのはもったいないのでやってません。
 で、なかなか機能の話にならないじゃないか、と言われそうですが、実はまだ余り使ってないんです。切れ味は最初から抜群ですが、妻の守り刀の為に鞘の中を削ろうとしても、この大きさでは奥まで届きません。ただ、カッター・ナイフでは折れちゃいそうな作業でも、刃毀れ一つ無くこなすのは事実です。鍛造はしっかりしている訳ですね。
 という訳で、守り刀を安く手に入れたい方は是非――。

宇宙暦44年6月22日


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